作品名・作者名 |
あらすじ |
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おすすめ度・評価 |
『この世で一番の奇跡』
オグ・マンディーノ(PHP研究所) |
主人公オグは、ある日駐車場で一人の老人サイモンと出会う。サイモンは現在ラグピッカーとして、人生に対して絶望を抱いている人々を救う活動を行っている。それに興味を示したオグは、サイモンとの仲を深め、一気に二人は親密な仲になっていく。そこでオグはサイモンから、様々な教えをもらい、啓発されていくが、突然サイモンはオグの前から姿を消す。オグは必死にサイモンを探すが、全く存在証明がない。今までのことはすべて夢だったのかと思うが、オグの手元にはサイモンからもらった「神の覚え書き」が……。
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自己啓発作家としてオグ・マンディーノが書いた2作目の作品。内容はいたって単純な物語であるが、まずその設定が面白い。主人公の名前はオグ・マンデイーノで、彼の仕事もろもろがすべて現実と同じというものになっている。一瞬現実のことなのかという錯覚を起こさせる。また内容に関しても、単純とは言いながらも、人生いかに生きるべきかという、我々の重大なそして永遠のテーマは奥深い。この書自体がまさに「神の覚え書き」であり、作者自体がラグピッカーとしてのサイモンなのであろう。
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『反文学論』
柄谷行人(講談社学術文庫) |
この書は柄谷行人の唯一の文芸時評集で、昭和50年代の前半にいくつかの新聞に掲載されたものである。内容は、その月その月に発表された作品に対する批評になっているが、相当な辛口批評で書かれている。さらに柄谷の独特な文学観も垣間見せるものになっているが、一読するだけでは、彼の言わんとすることを理解することは難しい。これだけ読むと、ずべての文学作品が否定されているように思えてならない。
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『日本の歴史00 「日本」とは何か』
網野善彦(講談社) |
これは2000年秋より刊行を始めた『日本の歴史』シリーズ全26巻の第1冊目で、通史に入る前の論集である。内容は、今までの歴史観の誤りを網野氏が鋭く切り込んでいくものである。特に、「日本」という称号についてや、「百姓=農民」という認識の誤りについて、氏の一種毒舌とも言えるほどの歯切れのよい言い回しで述べられている。なかなか読み応えのある書であった。
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『十二番目の天使』
オグ・マンディーノ(求龍堂) |
一流企業の社長に就任したハーディングは、突如、最愛の妻サリーと息子リックを交通事故で失ってしまう。人生の絶頂からどん底へ突き落とされたハーディングは、自分もこの世から去ろうと考えていたが、親友であるビルに救われ、会社も2ヶ月近い有給休暇をもらったということで、地元のエンジェルスというリトルリーグの監督を引き受ける。そこで最高のメンバーで優勝を目指して頑張るが、たった一人ティモシー・ノーブルという少年一人が気にかかる。彼は、体も小さく、野球も下手。しかし彼は、誰よりも努力をし、そして誰よりも明るい性格の持ち主で、ハーディング自身、その少年にリックの面影を見、彼から様々に影響を受けていく。一方チームは、優勝決定戦まで進み、見事優勝。最後の試合でノーブルも初ヒットを打ち、最高の形でリトルリーグのシーズンを終えたが、実はノーブルには隠された事実があった。
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この書は、ありふれた内容であるにもかかわらず、それを感じさせないだけでなく、深い感動をもたらすものであった。人間として生きる意味、それをやさしく我々に諭してくれるものである。小学生から大人まで、誰が読んでも感動できる素晴らしい書であると思う。僕自身、塾講師として小中学生を相手にしているので、是非、彼らにこれを薦めたいと思うものであった。
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★ ★ ★ ★ ★ |
『シャトウ ルージュ』
渡辺淳一(文藝春秋) |
フランスに旅行中、突如妻月子が誘拐される。しかしこれは夫克彦の陰謀であった。フランスのシャトウルージュへ妻を預けたのだ。目的は妻へのドレサージュ(調教)。この二人の夫婦生活はすでに冷め切ってきた。というより月子から一方的に冷めていたのである。原因はセックス。月子は完全に夫とのセックスを拒否していた。そこで夫は月子のドレサージュを計画するのである。期間は3ヶ月。その間月子は様々な性体験をし、徐々に生まれ変わっていく。それを克彦は見続けるのである。そしてついに月子は戻ってくるが、二人の関係は以前とほとんど変わっていない。しかしある日突然月子から積極的なセックスを求められる。克彦はついにドレサージュの効果があらわれてきたかと思っていたが、その次の日、月子が突然失踪。行き先はシャトウルージュ。月子はここでの経験に喜びを得、すでに夫克彦からは遠く離れたところへ行ってしまっていたのである。克彦は取り戻しに行くが無駄に終わる。
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『失楽園』でブレイクした渡辺淳一の話題作であったが、やはり予想通りの作品であった。はっきり言ってしまえば、「現代の性の不毛に鋭く切り込む衝撃の問題作!」などと帯には書いてあったが、こんなものは活字版エロ本程度のものにしか思えなかった。同じように性描写をした作品で言えば、村上春樹の『ノルウェーの森』の方が、よほど感銘を受けたと言えよう。ここまでベストセラーになっている理由が僕には分からない。
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★ ☆ ☆ ☆ ☆ |
『日本近代文学の名作』
吉本隆明(毎日新聞社) |
詩人であり、評論家でもある吉本隆明氏が記した近代文学に関するエッセイ集である。題目としては24作品について持論を展開するのであるが、さらに一つ一つの項目の中で、様々な作品についても言及しているので、実際にはもっと多くの作品について意見を述べている。ただ紙幅の関係上か、あまりにコンパクトにまとめすぎている気もしないではない。さらに、その読みはちょっと……というところも多々あったが、ただ非常に読みやすいということは確かである。
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★ ★ ★ ☆ ☆ |
『プロジェクトX リーダーたちの言葉』
NHKプロジェクトX制作班
今井彰(文芸春秋社) |
これは2000年3月よりNHKで放映されているものを本という形にしたものであるが、非常に勇気づけられる話が満載である。特に金持ちになったとかいうありがちな成功話ではなく、一つの仕事にどれだけ集中し、そのターゲットを完成させたかがよく伝わってくる。彼らのほとんどに共通して言えることは、お金のためではなく、自分のため、そして日本という国のためという思いで仕事をしたということだ。その努力は計り知れないものがある。それに対して自分は、どれほど仕事に誇りを持ってやっているかを痛感させられる本であった。
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★ ★ ★ ★ ☆ |
『「自分の木」の下で』
大江健三郎 画・大江ゆかり (朝日新聞社) |
ノーベル賞作家大江健三郎が記したエッセイである。そしてこれは著者も述べているとおり、小学高学年生から大学生くらいまで幅広く若者に向けて書かれたものであるので、非常に理解しやすく丁寧に構成されている。内容的には、人生とはいかに生きるべきか、という難題に対し、著者の幼い頃の体験をもとに我々に様々なアドバイスをしてくれるものである。当たり前のことを述べているのだが、さすがにノーベル賞作家だけに説得力はおおいにある。ただ一つ欠点を指摘すれば、―〜〜―の形であまりに挿入句を入れすぎているため、多少読みにくい部分があった。
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★ ★ ★ ★ ☆ |
『中陰の花』
玄侑宗久(文藝春秋) |
坊主である則道の身近な存在であったおがみやウメが自分の予言した日に亡くなる。それをめぐって妻圭子と超常現象というものについて語り合う。二人とも信じられないようで信じざるを得ないなような不思議な感覚を体験する。また、圭子は日常的に暇さえあれば紙縒を作っていたが、実はそれは4年前に流産したまだ見ぬ我が子への供養のためであった。もう4年という月日がたちながら、一度も流産した子供への供養をしていなかったことから、紙縒ができあがったら供養してくれと則道に頼む。そしてようやくできあがった紙縒を堂の天井がら吊し、供養の経を唱えると、なぜか紙縒がひらひらと揺れ始める。則道も圭子もこの異常な現象に気づきながら我が子と先日亡くなったウメの供養をする。
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これは第125回(平成13年度上半期)芥川賞を受賞した作品である。僕は「文藝春秋」で読んだ。内容的には、実際の坊主が超常現象などについて語るというところに興味を引かれた。またさすが本物の坊主だと思わせるような専門的な用語も登場し、面白みを感じるのであるが、全体を通して見ると、淡々としすぎて内容に厚みのようなものがあまりないように感じた。選考委員は満場一致で受賞作に選んだらしいが、僕にとってはそこまでという作品でもなかった。
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★ ★ ★ ☆ ☆ |
『宮沢賢治物語 新装版』
関登久也(学習研究社) |
この書は宮沢賢治の祖母方の血縁関係にある著者が、その思い出を語るものであるが、賢治の身近にいた著者ならではの挿話が沢山書かれているので、非常に興味深く、また一気に吸い込まれていく書であった。さらに、賢治の教師時代に教え子からの多くの話も盛り込まれていて、賢治の人物像がとてもよく理解できる。400ページほどの本であるが、久しぶりにのめり込んで読める本であったと思う。
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