作品名・作者名 あらすじ 表 紙
感想文
おすすめ度・評価
『きれいな敬語 羞かしい敬語』
草柳大蔵(グラフ社)
敬語の必要性は、特に私たち日本人にとって大きいものである。その手引き書的な役割であるのがこの書である。基本的な敬語の使用法をやさしく解説している著作であるが、ただそこまで細かく考えてしまうと、話せなくなってしまうよ、と思う部分も多々あった。申す少し内容に厚みが欲しかった。

50

 
『停電の夜に』
ジュンパ・ラヒリ(新潮社)
これは2000年度にピュリツァー賞を受賞した、ベンガル人女性の書いた短編小説を集めたものであるが、内容的に、面白くないという印象もなければ面白いという印象もない作品であった。全体的に文章が単調(訳のせいかもしれないが)で、盛り上がりがない。またあまりにインドに拘りすぎているようにも思える。もっと「次は?次は?」と思えるような内容が欲しかった。

60

 
『論理学入門』
三浦俊彦(NHKブックス)
推論のセンスとテクニックのためにとサブタイトルが付いているが、内容的には全く入門的とは言えない。この程度なら知っているであろうというレベルが高すぎて、初心者がすんなり入り込んでいける書ではないと思う。

10

 
『ソクラテスの弁明』
プラトン(岩波文庫)
この書は、プラトンにとって最も偉大な教師であるソクラテスが、死刑を宣告されるその法廷での弁明を描いたものと、牢獄にいるソクラテスを友人であるクリトンが訪ね、脱獄を勧める対話が描かれている。そこには、ソクラテスが自らの無実を主張する弁明と、そして勧められた脱獄に対して、それが賢明な策ではないということを、非常な論理展開で説明している。哲学的な意味はよく分からないが、その素晴らしく、完璧なまでの論理に、とても感動した。論理とはいかにあるべきかを学ぶのにこの書は最適である。

95

 
『日本文学の眺望―そのメトード』
島内景二(ぺりかん社)
この書は、小説・和歌・神話・伝説という多岐にわたるジャンルにおいて、「メトード=方法論」というものがいかになされているかを追究したものである。そしてキーワードの一つとして「如意宝」というものを挙げ、それを中心に論が展開されていく。非常に分かりやすい論理展開で、なるほどと思うものも多いが、率直に言って、「如意宝」という言葉こそあまり使われないが、それほど目新しいことを述べているとは思われなかった。ただ当たり前の読みを、言葉を変えて説明しているように感じた。

40

 
『人生の短さについて他二編』
セネカ(岩波文庫)
前4年頃〜後65年まで生きたストア派に属する哲学者セネカの著作3編を集めた書である。多の2編は『心の平静について』『幸福な人生について』である。内容的には、一貫して「徳」とは何か、「善」とは何かについて、手紙形式で書かれたものである。善く生きることを説き、まさに読者に語りかけてくるような筆致は、今から2000年も前に書かれたものとは思えないほど真に迫ってくる。一度こういう本を読んでみるのもいい人生勉強になるのでは。

80

 
『日本の歴史02 王権誕生』
寺沢薫(講談社)
この歴史書は、日本に王権が誕生するまでを綴ったものであるが、特に戦争と絡めて、古墳から分かる王権誕生を綿密に説明している。卑弥呼とはいったいどのような存在であったのか。またなにゆえに王が必要であったのか。非常に詳しく解説されているが、ただ多少説明が淡泊すぎるような印象も受けた。もう少し、素人でも興味を持てるような筆致がほしかった。

70

 
『国民の教育』
渡部昇一(産経新聞社)
これは現在の教育に疑問を持った著者が、その独特かつ厳しい主眼で今の教育制度に切り込んでいくものである。中には塾をもっと認知すべきだなど、多少共感すべきところもあるが、全体を通してみるとあまりに偏ったというか実現不可能なことばかり書かれていると思われてならなかった。また550ページ近くも書かれているわりには、それほど中身のある内容とも思えず、これくらいのことならその半分の枚数で書けるだろうと思った。ちょっと無駄が多すぎるところが難点……。

35

 
『日本の名作文学案内』
三木卓(集英社)
これは日本の近代以降の文学作品を、漫画と文で紹介していくというものである。一見、漫画と聞いただけでちょっと避けたくなるような雰囲気があるが、中身はなかなか良い。しっかり梗概も書かれているし、また作家についての説明、さらに時代背景についての解説も分かりやすく書かれている。その名の通り文学への案内書となっているので、これを読んで興味を持った作品を読んでみるのもいいだろう。

85

 
『日本の歴史01 縄文の生活誌』
岡村道雄(講談社)
この歴史書は、なかなか独特な書き方をされていて、非常に面白いものだと思う。具体的には、内容を物語の形式で説明していくというものだが、そのような歴史書は今までなかったと思う。しかしながら、本来★を4つ付けたいところであったが、発掘捏造事件の犯人藤村新一について、かなり触れていることや、内容の信憑性に疑いがあることが少し残念に思われた。現在は、この書は回収され、改訂版を作る予定になっている。

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