【風の又三郎】



■執筆
生前は未発表。
大正13年以前には初稿が成立していたが、それに加筆して初期形ができあがった。そして最終形は、昭和6年〜8年頃に成立したが、これは初期形を全面的に改変し、さらに他の童話などを改作して組み入れて出来上がっている。
■梗概
谷川の小さな分校に一人の赤毛の男の子が転校してくる。名前は高田三郎。新学期初日、三郎が教室に一人でいると、まわりのみんなが注目する。すると突然強い風が。それから「風の又三郎」とあだ名される。次の日、三郎が運動場にいるとまた強い風が吹く。それから徐々にみんなと打ち解けあっていく三郎であったが、たった転校十二日目で、また父の仕事の関係で転校することになってします。まさに風のように三郎は去っていく。




【銀河鉄道の夜】



■執筆
生前は未発表。
原稿執筆は、大きく四段階と考えられている。第一次稿・第二次稿(一部のみ現存)の成立は定かではないが、第三次稿は大正の末年までには成立していたらしい。そしてこれを初期形と呼んでいるが、二カ所に欠落がある。そして第四次稿は昭和6年に成立したが、やはり一カ所の欠落がある。
■梗概
漁にに出て帰らない父と病気の母をかかえているジョバンニは、学校の友人からは仲間はずれにされている孤独な少年である。彼は唯一の友人であるカムパネルラに憧れを抱いていたが、ある日、母に牛乳を届けようと使いに出たが、途中小高い丘の上で臥し一人銀河を仰ぐ。するとジョバンニはいつの間にか銀河鉄道に乗り込んで、地上とは違う銀河世界を旅していた。さらに隣にはカムパネルラが。ジョバンニはどこまでも行ける切符を手に、カムパネルラと二人、途中様々な出会いを経て、銀河系を回っていく。そしてサザンクロスに着いた時、カムパネルラに声をかけると、彼の姿は消えていった。そこで目覚めたジョバンニは、そのまま牛乳屋に寄った後、橋の所へ来ると、カンパネルラの溺死の事実を知るのである。




【セロ弾きのゴーシュ】



■執筆
生前は未発表。
昭和6年〜8年頃の成立と考えられる。
■梗概
町の活動写真館でセロを弾く係りのゴーシュは、仲間たちの中でもっとも下手で、今度町の音楽会で第六交響曲を披露するのであるが、その練習でも楽長に叱られてばかり。悔しかったゴーシュは家に帰って猛練習をするが、そこへ三毛猫がやって来る。ゴーシュはもの凄い勢いで「印度の虎狩」を弾いて追い返すが、次の日はかっこう、その次の日は子狸、そして鼠の親子がやって来る。そして音楽会当日、演奏は大成功で終わりアンコールの声。それにゴーシュが行かされ、みんながいやがらせで自分を行かせるのだと思ったゴーシュは、例の「印度の虎狩」を弾く。ところが投げやりで弾いた演奏が、みんなに感心され祝福されるのである。




【よだかの星】



■執筆
生前は未発表。
現存の草稿は大正10年頃の成立と考えられる。
■梗概
よだかはその醜さゆえに他の鳥から嫌われ、鷹からは名前の変更まで求められる。追いつめられたよだかは、遠い空へ行こうと飛び立ったが、太陽やオリオン、大熊などの星からそばに行くことを断られ、力尽きて地へ落ちる寸前、いきなり飛び上がり、どこまでも上がっていく。そしてその後燃え続け星となっていくのである。