作品名・作者名 |
あらすじ |
表 紙 |
感想文 |
おすすめ度・評価 |
『小説とは何か』
E.M.フォスター 米田一彦訳
(ダヴィッド社)
ISBN4-8048-0131-6
定価\840
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これは今から1927年に行われたクラーク講義をもとに書物という形式にまとめられたものである。内容は小説とはいったいどういう形を持った
ものなのかを、ストーリー・人物・プロット・幻想・予言・パターンとリズム・結論という題目で書かれている。ただ正直なところ、訳の問題なのか
、それとも講義自体の問題なのか分からないが、あまりに難しい内容で、それを完璧に理解するのは相当に困難であった。実際、読後感というか
なにか心に残る一節でもあればと思いながら読んだのだが……。再読してみようという気も、今のところ起きてこない。僕の理解力の問題なのかも……。
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『王朝生活の基礎知識』
川村裕子
(角川選書)
ISBN4-04-703372-3
定価 \1500+税
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古典文学を読む時、一番苦労することは何か。それはおそらく現代との風土の違い、文化の違いであろう。今から1000年も前に書かれた作品は、
当然のことながら現代という視点からのみでは理解できない。この書物は、そんな一般読者が古典文学に触れ合う手助けになるものであろう。
内容は、王朝時代に生きた女性たちの話を中心に、基本的な生ーや結婚、または宮仕えのことなどを、専門書とは違うわかりやすさで書かれている。
是非とも、これを読んでまたは読みながら、古典という日本の文化に近づいてみてはいかがであろうか。
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『ポトスライムの舟』
津村記久子
(文藝春秋)
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第140回芥川賞受賞作。
近年の芥川賞の中では一番良い作品だと思われる。平凡な女性たちの日常をありのまま描くという、何の変哲もない内容だが、それが逆にこの作品の
大きな魅力になっている。あるいは作者自身、登場人物たちと同年代であることから、自分の日常と重ね合わせる部分があったのであろうか。お金・友人関係
・結婚など誰しもが抱く思いを、登場人物たちの自然な吐露として描き、読む者それぞれが共感できるであろう。特に大きな出来事があり、すっきり解決
してくというありがちな作品とは異なるが、読後は妙な心地よさ・爽やかな気持ちを抱かせる。芥川賞受賞作では、久しぶりに一読の価値がある作品であると
思った。
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『告白』
湊かなえ
(双葉社)
ISBN978-4-575-23628-6
定価 \1400+税 |
中学校の教師である森口の娘がプールで浮いているのを発見される。当初は事故死ということであったが、真実は生徒によって殺されていた。
それを知った森口の復讐。さすが推理小説の各賞を受賞しただけはあって、かなりスリリングな展開。各章の最後に出てくる衝撃的な事実。
眠るのを忘れ、一気に読みたくなる。しかしながら、おそらくこの作品は賛否両論を呼ぶことになるだろう。たとえフィクションっであるからといって、
このような復讐が果たして許されるのであろうか。嫌悪感を催す読者もいるであろう。講師という教育の現場に携わる自分としては、多少複雑な
気持ちであるが、小説と割り切って読むぶんには相当引き込まれる作品であることは間違いないであろう。
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『脳はもっとあそんでくれる』
茂木健一郎
(中公新書ラクレ)
ISBN978-4-12-150300-8
定価 \700+税 |
脳科学者で有名な茂木健一郎の著作。彼の著作は何冊か読んでいるが、脳という一見堅そうな研究分野でありながら、常にその著作では一般読者に対して、
非常に分かりやすく解説されている。
この著作は、脳にこだわることなく、筆者の体験から得られた、いかに生きるべきかという、まさに人生論が語られている。中高年というよりも、できれば
中学生以上の青年層に読んでもらいたい一冊だ。
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『文藝 2009春』
(河出書房)
定価 \1000 |
今回の『文藝』は創作は3作品を読んだ。
『出発』(青山七恵)は、『ひとり日和』で芥川賞を受賞した作家なので、かなりの期待を持って読んだのだが、期待はずれだった。短編小説ならそれらしく、短い中に
物語の完結性がほしかったが、僕としてはあまりに中途半端で、主題の見えてこない作品であった。
『わたしたちはまだ、その場所を知らない』(小池昌代)は、あまりに平坦な内容で、読んでいて苦痛さえ覚えた。ココ!という盛り上がりも全くない。
『椿』(野中柊)も、特に内容の濃さを感じない。ありきたりなテーマで、ありきたりな結末。もっと厚みのある作品を期待したい。
今回の『文藝』は以上の3作品だけ読んだが、正直、どれもこれも心を揺さぶるような作品はなかった。次号に期待!
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『知的創造のヒント』
外山滋比古
(ちくま学芸文庫)
ISBN978-4-480-09177-2
定価 \560+税 |
日本語論の巨匠、外山滋比古の書いた独創的なアイデアを生み出す方法論である。これは相当昔に書かれたものを、文庫という形で再版したものであるので、多少読みながら、ちょっと時代が
違うなぁーと思われる部分もあるが、それでも、現代に通じる部分も多々ある。
内容としては、日常的な例を挙げつつ、そこから得られる知的創造のヒントや、筆者自身の経験に基づく話題などが豊富に含まれていて、納得できるところとそうでないところなど、
おそらく読者それぞれに違った感想を持つであろう内容になっている。ただ多少、お酒の話が多めかなw
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『源氏物語ものがたり』
島内景二
(新潮新書)
ISBN978-4-10-610284-4
定価 \700+税 |
今から約1000年前に書かれた日本文学の巨峰『源氏物語』。その文学的魅力に取り憑かれた人は数多いことであろう。その中でもその魅力を伝えるために奔走した9人の人物
(藤原定家・四辻善成・一条兼良・宗祇・三条西実隆・細川幽斎・北村季吟・本居宣長・アーサー・ウェイリー)を挙げ、彼らの残した業績を分かりやすく解説した書である。
一般読者向けに書かれたものなので、大変読みやすく、そしていかに源氏研究が困難なものであったかがよく伝わってくる。今後も彼らのような研究者が増え、
この日本の文化とも言える作品を、後世に確実に残していくことを願っている。
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『文章は接続詞で決まる』
石黒圭
(光文社新書) |
接続詞は読解をする時に大変重要な役割を果たしている。この本は、この接続詞に焦点を絞って書かれた書物であるが、基本的には文章作法においてっどう接続詞を使うかについて書かれたものである。接続詞の役割が事細かに書かれており、作文をする上での実践的な方法についても述べられた、非常に興味深い内容になっている。ただ、多少接続詞に含む語を拡大しすぎている印象を受けた。おそらくこの本を読む読者は、これも接続詞になるのかと驚くであろう。全般的に、筆者の主観的なイメージで書かれた部分が強いように思われる。しかし、接続詞だけを扱った一般読者向けの書物は珍しいので一読してみる価値はあるだろう。
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『悼む人』
天童荒太
(文藝春秋) |
この作品は、第140回直木賞受賞作品である。作者は以前、『永遠の仔』という作品で話題になったが、今回直木賞を受賞したということで僕も初めてこの作者の作品を読んでみた。
死者を悼む旅を続ける主人公・静人を中心に3人の人物のストーリーが順々に進行していき、読者である僕も徐々に物語の展開に引き込まれていった。所々で繰り広げられる観念的世界も
物語の中に違和感なく溶け込んでいた。ただこの作品は物語の中でも語られているが、死者というものをどう扱うか、そして死と向き合うべき姿勢として、主人公である静人の
行動は果たして正しいのか、賛否両論を呼ぶ作品であろう。僕自身の感想としては、あまりに死者をそして死を美化しすぎているのではないかと思われた。特に結末の部分は、死に向かう
リアルな描写と裏腹に最後の最後で死を美化する観念的な世界は多少受け入れがたいものがあった。
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