作品名・作者名 |
あらすじ |
表 紙 |
感想文 |
おすすめ度・評価 |
『忌中』
車谷長吉 (『文學界』 2003年10月号) |
病気の妻の介護に疲れた菅井修治は、妻とともに心中しようとしたが、自分だけが生き残ってしまう。それから、なんとなく生活送っていく修治であったが、明美との出会いによって、徐々に生き甲斐のようなものを見つけていく。しかしその反面、死んでしまった妻のことを考えると……。そして修治が最後に選んだ道とは。
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登場人物の初期設定自体は意外なものであるが、内容は非常に落ち着いた雰囲気のある作品であった。ある意味落ち着きすぎている作品である。結末部は、ある程度の緊迫感漂うところであるはずなのに、途中でその結末が読めてしまう部分もあってか、それほどドキドキすることもない。もう少し緊張感を出した作品の方が良かったであろう。
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『第七障害』
絲山秋子 (『文學界』 2003年9月号) |
予備校の講師をしながら趣味で始めた乗馬にはまっていった順子は、試合中のアクシデントにより愛馬ゴッドヒップを死なせてしまう。それをずっと引きづりながら、東京に逃げるように来た順子であるが、乗馬クラブでライバルであった篤に偶然出会い、徐々にゴッドヒップの呪縛から解放されていく。
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主人公順子の心の変化・移り変わりが非常によく伝わってくる。また別れた男の妹と同居するという設定にもそれほど違和感を感じることなく入り込める。全体としてよくまとまった作品である。
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『インストール』
綿矢りさ (河出書房新社) |
受験を控えた女子高生が、現在に生活から逃れるためにひきこもり生活に入る。ある日同じマンションの住人である小学生と出会い、ふとしたことから二人で風俗チャットのアルバイトを始めることになる。そして二人は大人の世界に浸りつつ、自分たちの境遇に照らし合わせていく。
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これは現役女子高生(ちょっとわかいい)が書いた小説で、文芸賞を受賞したことでも話題になった作品であるが、はっきり言って賞を受賞するほど内容の濃い作品とは思えなかった。つまらぬ作品とまでは言わないが、もう少し幅の広い表現力が欲しい。また2004年には、この作品が映画化されるらしいが、あまり期待のできるものとは思えない。
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『クリスピン』
アヴィ (求龍堂) |
これは以前も何度かあったが、求龍堂よりパイロット本としていただいたものである。よって内容はまだ出版されていないので書けないが、中世ヨーロッパを舞台に、一人の少年が自分を守るために戦い、徐々に大きな人間になっていくというストーリーである。それほど捻った内容ではなかったが、読み心地は悪くはない。2003年11〜12月頃発売予定。
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『天使になった男』
ジョー・タイ (ディスカヴァー) |
この書は、小説風に書かれた自己啓発書である。ただ単にこうするといいよ的な書物と違い、小説を読みながら、徐々に自分自身へ感化されていくところが面白いし、また受け入れやすい。何か、自分を奮い立たせるような本を探している人にはお勧め。
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『「原因」と「結果」の法則』
ジェームズ・アレン (サンマーク出版) |
この書は、約1世紀に前に書かれた自己啓発の書として、非常に多くの哲学者に影響を与えたものである。内容としては、当たり前のことを当たり前に書いてあることであるが、こういう当たり前のことが一番大事なんだろうなということに気づかせてくれるものであった。そういった意味では、内容は薄いが共感できる1冊である。
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『アンタマロの爺さん』
湯本香樹実 (『文學界』 2003年5月号) |
単調な物語の中に、主題らしきものを探しながら読み直してみたが、特にこれというものも見つからなかった。正直、面白いとか共感できるという感情をもてなかった。
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『ハリガネムシ』
吉村萬壱 (『文學界』 2003年5月号) |
内容としては単調であるが、その中に面白さのある作品であった。しかし、結末が曖昧で結局何であったのか分からずに終わってしまったのがちょっと残念。
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『稲妻の鏡』
松浦寿樹 (『文學界』 2003年5月号) |
色は黒かグレー。どんよりとした世界を描いているが、場面場面の映像が想像でき、自然とその世界の中に入っていけるという作品であった。特に最後の方の迫村とシューフエンのやりとりは、何となく安心する。
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『世界の中心で、愛をさけぶ』
片山恭一(小学館) |
久しぶりに良い本に出会ったという感想を持った。はっきり言ってしまえば、最も愛する者の死というありきたりなテーマであるとは思うが、僕としては、そういうありきたりな内容が一番良いように思う。最近の作品はやたらと複雑で、文体も難しく、また漢語の連発で読みにくいものが多い中、このように純粋に愛を語るような作品は、意外に貴重なものになりつつある。ただ欲を言えば、多少展開に無理があったと思われる。特に、白血病で死が直前の人間を、病室から連れ出すところなどは、ちょっとリアリティに欠けている。その点を多少減点しても、それなりに感動できる作品であった。
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