歌川 広重 (1798〜1858)
浮世絵師。 本名安藤鉄蔵。 江戸の定火消しの安藤家に生まれ家督を継ぎ、
その後に浮世絵師となりました。
また、ゴッホやモネなどの画家に影響を与え、世界的に著名な画家でも
ありました。
右写真 : 歌川 広重の自画像です。
フィンセント・ファン・ゴッホ (1853〜1890)
オランダ出身でポスト印象派(後期印象派)の画家。
彼の作品は感情の率直な表現、大胆な色使いで知られ、ポスト印象派の
代表的画家でありました。
右写真 : ファン・ゴッホの自画像です。
◎ 大はしあたけの夕立 ◎
歌川 広重 の名所江戸百景の一作品です。
隅田川に架かる大橋に篠つく雨の中、傘や菰をかぶうた通行人が足早に
渡っている。 下駄の音が橋脚に反響して聞こえてくるようである。
漆黒の空から矢のように降り注ぐ線を、彫師はどのような技術で彫り上げ
たのだろうか。
雨で霞む対岸と近景の橋脚の濃淡の見事なコントラストは摺師の馬連の
微妙な働きにかかっている。
絵師、彫師、摺師の緻密な組み合わせを必要とする浮世絵は、高度に発達
した市民社会が存在しなければ成立しない。
(以上、映画監督 篠田正浩:解説文より抜粋)
雨雲から きめ細かい線のように降り注ぐ雨の表現は、流石 広重浮世絵
の神髄かもしれません ?
右写真 : 歌川 広重 の 「 大はしあたけの夕立 」 です。
◎ 雨中の橋 ◎
ファン・ゴッホ の油彩・カンパスの作品です。
浮世絵をそっくり油絵で模写したのがゴッホである。 パリで蒐集浮世絵の
展覧会をしたことからも、彼の浮世絵への愛着の激しさが偲ばれる。
広重の隅田川に架かる大橋は雨中の冥暗の中でも明るい。 この明るさは
リアリズムではない。 浮世絵では夜の闇にあっても絵師が感得した事物
の姿、形が眼底に残れば遠慮なくその形、色を描き出す。
ゴッホは広重から 「 雨中の橋 」 の明るさを見て、西洋絵画の約束事から
離れた。 さらに雨や川という自然に取り巻かれた人間社会を一望する
視点を発見した広重に共鳴したゴッホがいる。
(以上、映画監督 篠田正浩:解説文より抜粋)
ゴッホは 広重の風景画の背景に、南フランスの風景を見出している
のでしょうか ?
右写真 :ファン・ゴッホ の 「 雨中の橋 」 です。
浮世絵は、木版による印刷物です。
絵師は 薄紙に目指す絵の下絵を線画だけで仕上げます。
それを裏返して版木に貼り付けて版下絵となります。 この線描画を
彫師 が彫り上げて墨版を、次に色版を彫り上げて
摺師 が色を重ねます。 摺師は馬連という
皿形の当革道具で紙の上を何度も擦りこんで 浮世絵 が完成
します。
このような観点から、ゴッホの 「 雨中の橋 」 を眺めると 西洋美術史に
浮世絵という日本絵画を認識させたのは 江戸文化の市民性 だったのですね。