今から1000年前の11世紀、紫式部は、 「 源氏物語 」 を著し、光源氏の生涯
を軸に平安時代の貴族の世界を描きました。
「 源氏物語絵巻 」 は、この 源氏物語 を絵画化した絵巻で、物語が成立して
から約150年後の12世紀に誕生しました。
その中でもとりわけ有名な作品は、 絵師 ・ 藤原隆能 の筆と伝えられています。
◎ 源氏物語絵巻 「 夕霧 」の詞書 ◎
秋の夜、夕霧が落葉宮(故柏木の妻)の母からの手紙を読もうとしている。
そこへ、その手紙を落葉宮から夕霧への恋文と誤解した雲居雁(夕霧の妻)
が嫉妬のあまり背後から忍び寄って奪い取ろうとする場面。
障子の陰で聞き耳を立てる2人の女房。
上記は、源氏物語第三十九帖「夕霧」絵巻の詞書 ( その絵に対応する
物語本文を書写したもの ) を現代文で現した抜粋です。
詞書には、記されていませんが絵巻に描かれた 硯箱、櫃、山水図の屏風など、
当時の文房具や室内調度の様子が覗われます。
右写真 : 源氏物語絵巻 夕霧の 「 詞書 」 の部分です。
◎ 源氏物語絵巻 「 夕霧 」 ◎
絵巻 「 夕霧 」 について、作家 阿刀田 高さん は ” 初めに言葉があった
十選 ” で、次のように記しています。(一部抜粋)
寝殿造りの家をななめ上から見下ろすす構図は、優れたアイデアである。
引目鉤鼻ももう一つの特徴で、目は細い線を引き、鼻も細く 「く」 の字の鉤
に描く。
この絵は 女がうしろから忍び寄って、男が読んでいる手紙を奪い取ろうと
している。
「 あ、これは夕霧が妻の雲居雁に意地悪をされる場面 」 と納得する。
考えてみれば、手紙は 言葉を文字に換えて伝えるもっとも日常的な手段であり、
つい先ごろまでは、すこぶる大切なものであった。
電話やIT機器の発達で、手書きのレターは 影をひそめたが、ラブレターに
一喜一憂した昔が懐かしい。
思えばよい教養は、よい手紙を書かせたものであったけれど・・・・。
流石、阿刀田さん、この絵巻から素晴らしい発想を私たちに与えくれました。
感謝 !
右写真 : 源氏物語絵巻 「 夕霧 」 (21.8×30.5cm)です。 (五島美術館蔵)
このページのスタートは、阿刀田さんの 「 思えばよい教養は、
よい手紙を書かせたものであった。 」 につきます。
いつの間にか 漢字や書き順 を忘れ戸惑う姿を 曝す私です。
ワードやグーグルに頼らず、電子辞書(?)片手に 「 手書きの手紙 」 に
挑戦する今日この頃です。 ガンバレー !